#06 「砂に書かれた三角形」—おしゃれ合戦 名探偵ポワロ
Triangle at Rhodes (12 February 1989)
Hercule Poirot: DAVID SUCHET
みんな大好きな休暇旅行編です。後々ジャップ警部にもからかわれますが、ポワロさんは旅行をするたび必ず殺人事件に巻き込まれますね。旅行のエピソードでは舞台になる町や建物、そこに暮らす人々たちが醸し出す異国情緒が見所。今回はテーマ曲をはじめサウンドトラックがすべてロードス風の弦楽器で演奏されていて、旅気分が盛り上がるのも大きなポイントです。
ヘイスティングスもミス・レモンもジャップ警部もお休みなのはちょっとさみしい気もします。 “ミス・レモンの姉妹”についてはすでにみなさん触れてらっしゃるので割愛。
このページは名探偵ポワロ「砂に書かれた三角形」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。
このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。
あらすじや解説はこちらでどうぞ。
●名探偵ポワロ徹底解説
●「名探偵ポワロ」データベース
●旅行鞄にクリスティ
杖
藤で編まれたグリップとまだら模様のシャフトが美しい大曲杖。紳士は状況に応じて杖を持ち替えるんですね。これまでよく登場していた銀の白鳥グリップの杖と比べるとややカジュアルな印象。海辺のリゾートで休暇を過ごすのにぴったりなデザインです。白鳥杖は仕事中に、もしくはディナーやパーティといったフォーマルなシチュエーションで使うためのもののようで、今回はお留守番です。
襟のお花
ほぼ全編で、まだ開ききってない小さな赤いバラ(花を知らない僕でもさすがにバラはわかりました)をボタンホールに直接挿していました。それからいつものブーケ型ブローチにピンク色のお花をそえていた場面もありましたね。どんなときも生花を身につけるというスタイルを貫くセンスの高さに、毎度のことながら感心しきりです。
帽子
杖と同じように、旅先でのポワロさんは帽子も普段と違ったものをお召しになります。暖かい海辺の今回はストローハット。クラウンがやや高く見える形状で、変形ポークパイといえばいいでしょうか。日差しを遮るためにつばも広めでした。
三つ揃え
生成りの麻スーツ(ダブル6つボタン)と、青みがかった淡いグレーのスーツ(シングル2つボタン)の2組をお持ちになっていたようです。それに加えて、色や質感の違うベストも持参していて、毎日違った着こなしを披露するのがポワロさんのすごいところ。
ベスト
生成りのスーツにはゴールドのベストを、淡いグレーのスーツには深い青のベストを合わせて、変化を楽しませてくれます。ゴールドのベストは「24羽の黒つぐみ」で黒いジャケットと合わせていたもの。組み合わせを違えるとこうも印象が変わるんですね。さすがポワロさん、巧みです。
ボウタイ
確認できたのは赤、白、ベージュ、シルバーと、ベストと合わせた深い青、ゴールドのもの。荷造りが雑なメイドに小言をいう場面ではかなりの本数が映っていましたね。
サングラス
日差しが強いので丸いレンズのサングラスも。生成りのスーツに赤いボウタイ、口髭にサングラスの姿は「紅の豚」のポルコにそっくり。
タキシード
ポワロさんがタキシードでばっちりキメたシーンはありませんでしたが、ディナーに行く準備でしょうか、夕方に自室でブラックタイを結ぶサービスカットがありました。
そしてさらに、メインページの左上「 ≡ 」マークのサイドバーから「The Style of Poirot」を開くとタグの一覧が出てきます。それぞれのタグをタップすると、そのアイテムが登場したエピソードが抽出される仕組みです。たとえば「チャコールグレーの三つ揃えを着てたのがどの回だったのか思い出せない」ってときは「三揃墨」のタグを、「ゴールドのベストにチャコールグレーのストライプズボンの回は?」ってときは「ベスト金」や「ズボン墨縞」のタグをタップすれば見つかるようになってます。今後はエプロン姿や泥棒ファッションのポワロさんも登場しますので、おたのしみに。
バレンタインは「私には華があるの。派手な色で飾り立てる必要なんてないわ」といわんばかりに、色味を抑えたファッションでした。ただ、質感がエレガントで、スタイルのよさとシャープな顔立ちを引き立てるシルエットのドレスやハットを選んでいて、自分のアピールポイントを熟知してなきゃできない超手練れな着こなしでした。遺跡散策のときのモノトーンなセットアップも、殺されるときにお召しだったイブニングドレスも華麗なオーラがすごい。男がクラクラしちゃうのは必然です。
陽気でおっちょこちょいなパメラはバレンタインと対照的に、赤白チェックのブラウスや白地に赤青のドット柄ワンピース、カラフルでアールデコなビーチドレスなどなど、明るくてポップで愛らしい装いがお似合いでした。ポワロさんと街で会ったときの格好は偶然にも色味がそっくりで、バカな歳の差カップルのペアルックみたいになっちゃってましたが、パメラだとそれさえもかわいらしく見えるから不思議です。
マージョリーは…まぁ、ね。ほら、ほかの2人がすごくおしゃれだったから、なんかダサいみたいな感じになっちゃてるけど…別にひどくはないよ、ね?花柄のブラウスとか歳より若しく見えるしピンクのイブニングドレスだって、だって…ごめん、話題変えていい?
そんなことより大問題なのはチャントリーのスクール水着でしょ。モジャモジャのうで毛すね毛を強調するスタイル。1930年代はこんなのがよしとされてたんですかね。ただのコスプレ変態おじさんにしか見えません。ハンチングなんて被ったところでダメです。とりあえずそのモッコリを隠しなさいよ。
「私はいいました!何度もいいましたっ!わたしゃ休暇で来てる!どおーしてわからないんですか!わたしゃベルギー人です!なんで疑われるんですかッ!」
その声の主はもちろんポワロさん。もう、最高だよね。表情一発で笑わせるポワロさんもめちゃくちゃ面白いけど、カンカンに怒ってるポワロさんの声を聞いたら爆笑せずにはいられません。直前にナポリ人が怒鳴り散らしてるのを白い目で見るポワロさんのカットが入ってるのとか、訃報を聞いたあとも興奮が収まらずパメラにまで大きな声を出しちゃうのとかも、お見事。すべてはポワロさんの雄叫びを際立たせるために、より面白くするために。芸が細かいなあ。
それにしても「名探偵ポワロ」にはよくキドニーが登場します。そのたびに食べたくなるんですが、日本ではパイでもプディングでも串焼きでも、美味しいキドニーを食べられるところがあんまりないのでいつも妄想だけして我慢してます。
魚が釣れずに買ってきたことを見抜かれ、次の目的地はアビシニアだと言い当てられたバーンズ少佐は、ポワロさんの鋭い観察眼に驚いてたけど、彼も負けないくらいに頭の回転が速いし勘がよかったですよね。ポワロさんが地元警察から毒薬の情報をもらえなくて困ってると知ると、ためらわずにすぐ自分の仲間の鑑識専門家を紹介したし、チャントリーとマージョリーが逃走すると踏んで港を見張り、彼らがトルコに向かうのを見定めてポワロさんに知らせました。的確にポワロさんをアシストできたのは、彼が英国のスパイだったから。敵対するイタリアの軍事情報を集めるために、釣り客を装ってロードス島に滞在していました。ポワロさんを疑った島のイミグレ職員たちはまったく気づいてないようですが。
陽気でお気楽なリゾート地にも着実に戦争の影が迫ります。こんな風に当時の時代背景を描くことで物語のリアリティが増して、ぐっと味わい深くなるところも「名探偵ポワロ」の魅力のひとつだと思います。
ハイキングにいった日のレストランで、2人はみんなの前でわざわざ派手に口論してみせてたけど、あれはなんだったんでしょう。2人の関係をカムフラージュするつもりだったんでしょうか。別に誰もデキてるなんて疑ってなかったし、ただ悪目立ちしただけだったんじゃない?そういうの、ポワロさんは見逃さないですよ。
ポワロさんによるとチャントリーは「島に銃を持ち込む危険は犯さない」くらいに「用心深い」ので、事前に準備した毒薬を島に持ち込むという選択肢はハナからなかったかもしれません。でも現地でディリテリオ・オキアスを買ったせいで足がついたことを考えると、税関で発覚するリスクを背負ってでも持ち込んだ方がよかったようです。ポワロさんは留置所で“ダグラスは白”と確信したとき同時に“ならばマージョリーが黒”と疑ったので、毒薬を現地調達しようが持ち込もうが、どっちにしろ犯行はバレます。でももし持ち込みの毒薬を使っていたら出所を手繰れないので時間稼ぎはできたはずです。ポワロさんが真相をあぶり出すころには、2人はロードス島を脱出して、トルコに入国できていたかもしれません。
Hercule Poirot: DAVID SUCHET
みんな大好きな休暇旅行編です。後々ジャップ警部にもからかわれますが、ポワロさんは旅行をするたび必ず殺人事件に巻き込まれますね。旅行のエピソードでは舞台になる町や建物、そこに暮らす人々たちが醸し出す異国情緒が見所。今回はテーマ曲をはじめサウンドトラックがすべてロードス風の弦楽器で演奏されていて、旅気分が盛り上がるのも大きなポイントです。
ヘイスティングスもミス・レモンもジャップ警部もお休みなのはちょっとさみしい気もします。 “ミス・レモンの姉妹”についてはすでにみなさん触れてらっしゃるので割愛。
このページは名探偵ポワロ「砂に書かれた三角形」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。
このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。
あらすじや解説はこちらでどうぞ。
●名探偵ポワロ徹底解説
●「名探偵ポワロ」データベース
●旅行鞄にクリスティ
ポワロさんのおしゃれ
旅行中のポワロさんはとにかく毎回おしゃれ。今回のハイライトもポワロファッションといっていいでしょう。いつもの仕事モードとはひと味違った、力の抜けた着こなしをたくさん見られます。 ポワロさんにとってはおしゃれすること自体が旅の目的になってるのかもしれませんね。杖
藤で編まれたグリップとまだら模様のシャフトが美しい大曲杖。紳士は状況に応じて杖を持ち替えるんですね。これまでよく登場していた銀の白鳥グリップの杖と比べるとややカジュアルな印象。海辺のリゾートで休暇を過ごすのにぴったりなデザインです。白鳥杖は仕事中に、もしくはディナーやパーティといったフォーマルなシチュエーションで使うためのもののようで、今回はお留守番です。
襟のお花
ほぼ全編で、まだ開ききってない小さな赤いバラ(花を知らない僕でもさすがにバラはわかりました)をボタンホールに直接挿していました。それからいつものブーケ型ブローチにピンク色のお花をそえていた場面もありましたね。どんなときも生花を身につけるというスタイルを貫くセンスの高さに、毎度のことながら感心しきりです。
帽子
杖と同じように、旅先でのポワロさんは帽子も普段と違ったものをお召しになります。暖かい海辺の今回はストローハット。クラウンがやや高く見える形状で、変形ポークパイといえばいいでしょうか。日差しを遮るためにつばも広めでした。
三つ揃え
生成りの麻スーツ(ダブル6つボタン)と、青みがかった淡いグレーのスーツ(シングル2つボタン)の2組をお持ちになっていたようです。それに加えて、色や質感の違うベストも持参していて、毎日違った着こなしを披露するのがポワロさんのすごいところ。
ベスト
生成りのスーツにはゴールドのベストを、淡いグレーのスーツには深い青のベストを合わせて、変化を楽しませてくれます。ゴールドのベストは「24羽の黒つぐみ」で黒いジャケットと合わせていたもの。組み合わせを違えるとこうも印象が変わるんですね。さすがポワロさん、巧みです。
ボウタイ
確認できたのは赤、白、ベージュ、シルバーと、ベストと合わせた深い青、ゴールドのもの。荷造りが雑なメイドに小言をいう場面ではかなりの本数が映っていましたね。
サングラス
日差しが強いので丸いレンズのサングラスも。生成りのスーツに赤いボウタイ、口髭にサングラスの姿は「紅の豚」のポルコにそっくり。
タキシード
ポワロさんがタキシードでばっちりキメたシーンはありませんでしたが、ディナーに行く準備でしょうか、夕方に自室でブラックタイを結ぶサービスカットがありました。
ここでちょっとお知らせ
このブログでは各エピソードでポワロさんが身につけていたアイテムを細かく記録していて、それぞれのページの一番下にタグ付けしています。字数制限があるんで略して書いてますが、そのお話でポワロさんがどんな格好をしていたか一目でわかるようになってます。靴に関しては、画面で確認しにくいのとあんまり代わり映えしないのとで、タグ付けはしてません。ポワロさんの靴はいつも黒のエナメルシューズで、スパッツは白かグレーです。それ以外の靴を履いてたときには記録するようにします。そしてさらに、メインページの左上「 ≡ 」マークのサイドバーから「The Style of Poirot」を開くとタグの一覧が出てきます。それぞれのタグをタップすると、そのアイテムが登場したエピソードが抽出される仕組みです。たとえば「チャコールグレーの三つ揃えを着てたのがどの回だったのか思い出せない」ってときは「三揃墨」のタグを、「ゴールドのベストにチャコールグレーのストライプズボンの回は?」ってときは「ベスト金」や「ズボン墨縞」のタグをタップすれば見つかるようになってます。今後はエプロン姿や泥棒ファッションのポワロさんも登場しますので、おたのしみに。
みんなのおしゃれ
脇を固める女性陣もポワロさんに負けないくらいめっちゃおしゃれでしたね。バレンタインは「私には華があるの。派手な色で飾り立てる必要なんてないわ」といわんばかりに、色味を抑えたファッションでした。ただ、質感がエレガントで、スタイルのよさとシャープな顔立ちを引き立てるシルエットのドレスやハットを選んでいて、自分のアピールポイントを熟知してなきゃできない超手練れな着こなしでした。遺跡散策のときのモノトーンなセットアップも、殺されるときにお召しだったイブニングドレスも華麗なオーラがすごい。男がクラクラしちゃうのは必然です。
陽気でおっちょこちょいなパメラはバレンタインと対照的に、赤白チェックのブラウスや白地に赤青のドット柄ワンピース、カラフルでアールデコなビーチドレスなどなど、明るくてポップで愛らしい装いがお似合いでした。ポワロさんと街で会ったときの格好は偶然にも色味がそっくりで、バカな歳の差カップルのペアルックみたいになっちゃってましたが、パメラだとそれさえもかわいらしく見えるから不思議です。
マージョリーは…まぁ、ね。ほら、ほかの2人がすごくおしゃれだったから、なんかダサいみたいな感じになっちゃてるけど…別にひどくはないよ、ね?花柄のブラウスとか歳より若しく見えるしピンクのイブニングドレスだって、だって…ごめん、話題変えていい?
そんなことより大問題なのはチャントリーのスクール水着でしょ。モジャモジャのうで毛すね毛を強調するスタイル。1930年代はこんなのがよしとされてたんですかね。ただのコスプレ変態おじさんにしか見えません。ハンチングなんて被ったところでダメです。とりあえずそのモッコリを隠しなさいよ。
絶叫ポワロふたたび
バレンタインの死をポワロさんに知らせるため港に駆けつけたパメラ。着いたときにはすでに船は出港していて、ああ、間に合わなかったかと肩を落とす。そこに遠くから聞こえてくる絶叫。声がひっくり返っちゃうほど興奮しています。「私はいいました!何度もいいましたっ!わたしゃ休暇で来てる!どおーしてわからないんですか!わたしゃベルギー人です!なんで疑われるんですかッ!」
その声の主はもちろんポワロさん。もう、最高だよね。表情一発で笑わせるポワロさんもめちゃくちゃ面白いけど、カンカンに怒ってるポワロさんの声を聞いたら爆笑せずにはいられません。直前にナポリ人が怒鳴り散らしてるのを白い目で見るポワロさんのカットが入ってるのとか、訃報を聞いたあとも興奮が収まらずパメラにまで大きな声を出しちゃうのとかも、お見事。すべてはポワロさんの雄叫びを際立たせるために、より面白くするために。芸が細かいなあ。
Bowels in Spit
せっかく異国にきてるのに、ご当地の美味しい食事のシーンがないのは残念。描かれたのは猛烈に険悪なムードの中でポワロさんが料理を注文する場面だけでした。頼んだのは「内蔵の串焼き」ラムのキドニーを炭火で焼いたもの。原語では"Bowels in Spit"、skewerといっていて炭火焼かどうかには言及されてませんでした。日本語訳の方がどんな料理かイメージできて美味しそうですね。それにしても「名探偵ポワロ」にはよくキドニーが登場します。そのたびに食べたくなるんですが、日本ではパイでもプディングでも串焼きでも、美味しいキドニーを食べられるところがあんまりないのでいつも妄想だけして我慢してます。
忍びよる第2次世界大戦の影
小銃を抱え我が物顔で街を闊歩する“黒シャツ党”は(黒シャツ隊と訳されるのが一般的なようですが)ムッソリーニ率いる国家ファシスト党の民兵組織だそうです。民兵とはいえイタリア王国から独裁権を獲得できるくらいだからかなりの勢力だったみたい。当時の“悪役”はナチスしかり、強そうで悪そうでかっこいいコスチュームが流行だったんですね。魚が釣れずに買ってきたことを見抜かれ、次の目的地はアビシニアだと言い当てられたバーンズ少佐は、ポワロさんの鋭い観察眼に驚いてたけど、彼も負けないくらいに頭の回転が速いし勘がよかったですよね。ポワロさんが地元警察から毒薬の情報をもらえなくて困ってると知ると、ためらわずにすぐ自分の仲間の鑑識専門家を紹介したし、チャントリーとマージョリーが逃走すると踏んで港を見張り、彼らがトルコに向かうのを見定めてポワロさんに知らせました。的確にポワロさんをアシストできたのは、彼が英国のスパイだったから。敵対するイタリアの軍事情報を集めるために、釣り客を装ってロードス島に滞在していました。ポワロさんを疑った島のイミグレ職員たちはまったく気づいてないようですが。
陽気でお気楽なリゾート地にも着実に戦争の影が迫ります。こんな風に当時の時代背景を描くことで物語のリアリティが増して、ぐっと味わい深くなるところも「名探偵ポワロ」の魅力のひとつだと思います。
愛の逃避行/トルコが安息の地、のはずだったのに
人目につかない場所でひっそりと殺すんじゃなくて、みんなのいる前で毒殺したのは好感が持てます。人が大勢いるところでの犯行は度胸がないとできませんが、容疑者が増えて捜査を誘導しやすくなって、結果として自分が疑われるリスクが下がるという利点があります。そのことを想定して、実際にダグラスが逮捕されるように仕向たチャントリーとマージョリーはクレバーです。そしてなにより、大胆な劇場型の殺人はドラマチックでわくわくします。そういう点では2人は良い犯人、かな。ハイキングにいった日のレストランで、2人はみんなの前でわざわざ派手に口論してみせてたけど、あれはなんだったんでしょう。2人の関係をカムフラージュするつもりだったんでしょうか。別に誰もデキてるなんて疑ってなかったし、ただ悪目立ちしただけだったんじゃない?そういうの、ポワロさんは見逃さないですよ。
ポワロさんによるとチャントリーは「島に銃を持ち込む危険は犯さない」くらいに「用心深い」ので、事前に準備した毒薬を島に持ち込むという選択肢はハナからなかったかもしれません。でも現地でディリテリオ・オキアスを買ったせいで足がついたことを考えると、税関で発覚するリスクを背負ってでも持ち込んだ方がよかったようです。ポワロさんは留置所で“ダグラスは白”と確信したとき同時に“ならばマージョリーが黒”と疑ったので、毒薬を現地調達しようが持ち込もうが、どっちにしろ犯行はバレます。でももし持ち込みの毒薬を使っていたら出所を手繰れないので時間稼ぎはできたはずです。ポワロさんが真相をあぶり出すころには、2人はロードス島を脱出して、トルコに入国できていたかもしれません。
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