#11 「エンドハウスの怪事件」—美しく散る殺人犯 名探偵ポワロ
Peril at End House (7 January 1990)
Hercule Poirot: DAVID SUCHET
Captain Hastings: HUGH FRASER
Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON
Miss Lemon: PAULINE MORAN
年代物の飛行機を追う優雅な空撮映像からの、いまにも脳の血管が切れそうな切迫したポワロさんの顔アップ。肘掛けをギュッと握りしめ目を固くつぶって恐怖に耐えています。そんなに飛行機が嫌いなら乗らなきゃいいのに。「ポワロさんは想像力が欠如してるんじゃないですかねえ」とヘイスティングスにからかわれて「その通りです!幸い君が2人分持ち合わせているようですから、それで十分ですよ!」と泣き叫ぶこのおじさんが、あんな難事件を解決するような人には見えませんね。このときの“2人分”はエピローグのアイスクリーム2人分と対になっててなかなかニクい演出でした。
このページは名探偵ポワロ「エンドハウスの怪事件」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。
このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。
あらすじや解説はこちらでどうぞ。
●名探偵ポワロ徹底解説
●「名探偵ポワロ」データベース
●旅行鞄にクリスティ
マギーを殺してマイケルの遺産を相続するというニックの計画は、かなり時間をかけて入念に準備され、さらに実行段階では常に状況を分析して把握し、かなり即興的に行動を変えながら成し遂げられました。ただ1人でそれをやってのけたニックは天才的犯罪者です。このエピソードをただ観ただけではニックの類稀な才能がわかりにくいので、彼女の目線で経緯を書き出してみます。以下、物語上の事実よりも僕の妄想がかなりの部分を占めると思います。ご了承ください。
<動機>
経済的に困窮していてお金持ちの男性と結婚したいニックはシートン卿の甥マイケルに目をつけましたが、彼は従姉妹のマギーと婚約しました。2人が婚約を隠しているとわかり、“世間に婚約が知られる前に2人とも死ねば、同名の自分がマイケルの婚約者だったことにして遺産を相続できる”と思いつきました。
この発想は “遺産の多くは婚約者マギーに相続されるはず”という推測が前提になっていて、その見通しは的確でした。ニックは勘が冴えるとかなんだか予感がするとか、そういう不確実な要素を理由には行動しません。予見が当たったのは“マイケルの経済状況や社会的立場を考えれば彼は遺言書を作成しているはず”という冷静で論理的な分析ができていたからです。以降もニックはロジカルに考察して、そのときの状況や先々起きることを見事に読んでいきます。
<計画>
ニックはマイケルが世界一周飛行を計画中と知って、彼がその飛行で命を落とすと睨み、マイケルの飛行失敗のタイミングでマギーを殺すことを企てました。当初、ニックはすべての罪をクロフト夫妻に着せるつもりだったんじゃないかと思います。一連のできごとが“クロフト夫妻が財産を狙ってニックを殺そうとしたが、誤ってマギーを殺してしまった”と見えるように偽装する計画でした。
<準備>
まずは夫妻にニックの遺言書を改ざんさせることからはじめました。あとでそれが発覚すれば、夫妻が遺産相続を目的に殺害を計画したように見えるからです。田舎者で無学な老人たちの欲を煽って誘導することは簡単でした。偶然盲腸の手術を受けることになりましたが、ニックはこれを絶好の機会とばかりに利用しました。世間知らずで軽卒な若者を演じるニックは、手術直前に夫妻の前で資産の心配をするそぶりを見せて、彼らがニックに遺言書作成を助言したくなるように振る舞いました。ニックはいわれるがまま遺言を書いて夫妻に預け、「弁護士のチャールズに郵送してあげる」という夫妻の言葉に甘えたフリをしました。そうすることで、彼らが欲に駆られて遺言書を改ざんするように仕向けたのです。夫妻は「もしも手術が失敗してニックが死んだらわしら大金持ちだぁ」なんて笑いながら、宝くじを買うようなお遊び気分で遺言書を改ざんしました。これでニックの計画の下地ができ上がりました。
それからしばらくはひたすら時期を待ちました。その間にやったことといえば、マギーが着そうな黒のドレスを用意したこと、常用しているコカインを少しずつ貯めておいて特製コカインチョコレートを作ったこと、マイケルの写真を手に入れて写真立てに入れたことくらい。
<実行>
手術から半年後、マイケル行方不明の報を受けたニックはにわかに行動をはじめました。たまたま同時期にマイケルの叔父シートン卿が死んで遺産額が跳ね上がり、計画に対するモチベーションも俄然上がりました。マギー殺害計画の肝になるのは、洞察力のある人物をこの事件に介入させることです。その人物が“ニックは命を狙われている”と疑うように誘導することで、遺産相続を達成できます。警察か地元の私立探偵にその役をさせるつもりでしたが、世界的に有名な探偵がセント・ルーに来ることを新聞で知り、急遽彼を計画の中心に据えることにしました(ニックはポワロさんが町に来るって知ってたはずだよなぁ、って思いながら見てたんだけど、それを説明をする描写がなくてモヤモヤしてました。で、見終わったあとに 「名探偵ポワロ」データベース を読んでスッキリしました。ちゃんと"FAMOUS DETECTIVE VISITS ST. LOOE"って記事になってたんですね)。
ポワロさんが町に来る前に車のブレーキに細工をし、庭のはずれの崖に大きな岩を落として、「3日間で3度も死にかけた」と友人たちに触れて回りました。そして父の形見の銃で白いハットを撃って穴を開け、銃弾を回収しました。
ポワロさんと接触するためにマジェスティック・ホテルにいくと、たまたまポワロさんが転んでうずくまっていました。それを見た瞬間にニックは「いまがチャンス!」とポワロさんのもとに駆けよって手を貸しました。ファーストコンタクトでいい印象を与えられれば、計画を進める上で自分に疑いの目が向きにくくなるので、このシチュエーションはとても幸運でした。ニックの狙った通りポワロさんは「チャーミングなマドモアゼル」と好感を抱きました。ポワロさんと親しく会話をし、友人にしたように「3日間で3度も死にかけた」話をしました。そして水上飛行機の轟音が響いたところで「顔の前にミツバチが飛んできた」といってハットを脱ぎました。“銃声が聞こえなかったのは飛行機の音がうるさかったから”とポワロさんを誤解させるためにタイミングを見計らいました。実際には狙撃されておらず銃声が聞こえるはずがない状況で、見事にポワロさんを騙したんです。おそらく飛行機の音に合わせて演じるのはその場で思いついた即興だろうと思いますが、現実に即していてとても効果的でした。そして帰る前に発射済みの銃弾を近くに落とし、ポワロさんに介入させるための準備が整いました。
案の定、ハットの穴と銃弾に気づいたポワロさんはすぐに家を訪ねてきて「あなたは命を狙われている」といいました。 「電報でマギーを呼びよせるように」とも。自分から進んでマギーを呼ぼうとするのではなく、ポワロさんの口から提案させることで、ニックが疑われるリスクは格段に下がります。すべてが計画通りに運んでいるので思わず笑いがこぼれそうです。
彼氏が行方不明になり不安でいっぱいなマギーの心情を考慮して、読んだらセント・ルーにいきたくなるような文章を考えて電報を送りました。「マイケルからの手紙を持参するように」という旨の文言も添えて。どんな言い回しだったかはわかりませんが、不信感を抱かせない上手な表現だったはずです。
翌日マギーを駅に迎えにいくついでに、街角の煙草屋だか新聞スタンドだかの、貧乏だけど無口な親父にコカインチョコの小包を預け、数日後に精神病院に郵送するように依頼して小遣いをやりました。マギーが家にやってくると隙を見て荷物の中からマイケルからの手紙を抜き出して、文面に「マギー」と書かれているものとそうでないものを選り分けます。書かれていないものだけを写真と一緒にタンスにしまい、書かれていたものは処分しました。そしてマギーのコートを隠しました。
マギー殺害はこの晩に決行するつもりで計画を立てていましたが、マイケルの死亡を確認しないと殺す意味がありません。幸い夕方のラジオでそのニュースが流れたので予定通り花火大会中に殺害しました。この日を決行日に選んだのは花火の音で銃声が人に気づかれにくいからです。コートを見つけられないマギーは仕向けた通りにニックのストールを身に着けたので、まったくスムーズに殺すことができました。
ポワロさんや警察はマギーがニックと間違えられて撃たれたと推理し、かかりつけの医者は安静と安全確保のために入院するように勧めてきました。すべて思い描いた通りです。勧めに従った形で入院することにしました。
入院中にポワロさんが遺言書について聞いてきたら、わざと曖昧に答えてポワロさんに家捜しをさせ、前もってタンスにしまったマイケルの手紙を見つけさせる算段でした。実際その通りにことが運び、ミスリードした通りにポワロさんは“ニックとマイケルは婚約していたんだ”と誤解してくれました。ここまでくればあとはコカインチョコを食べて死んだフリをするだけです。そうすれば間違いなく、クロフト夫妻は半年前の遺言書を思い出して色めき立ち、それを弁護士のチャールズ宛に郵送するはずです。チョコレートに入れたコカインの量は致死量を超えないようようにしっかり調整してあるので、安心して食べました。
中毒症状が収まって体が落ち着くと、ポワロさんから“ニックは死んだことにして捜査を続けてはどうか”という提案を受けました。それはニック自身が事前に検討していて、むしろニックからポワロさんに提案するつもりでいたことでした。驚いたことにポワロさんはニックが期待した以上に都合よく動いてくれるのです。なので当然受け入れました。
そして全員集合の謎解きと霊媒のクライマックス。もともと演技をするのは嫌いじゃないし、これが終わればマイケルの遺産を相続できると思うとテンションが上がるし、オバケ役をノリノリでやりました。だからまさか自分の周到な犯行がポワロさんに見抜かれるなんて思ってもいなくて…。
ポワロさんの謎解きが始まる前に、ニックが親友のフレディのコートに銃を忍ばせたのはすごく違和感がありました。もちろん“ニックを殺そうとしたのは経済的に困窮したフレディだった”ということにしたかったんでしょうが、“遺言書を改ざんした犯人とマギーを殺した犯人が別”というのはちょっとチグハグな印象を受けます。ニックがなぜフレディに罪を着せようと考えたのか、どのタイミングで計画を変更したのかはわかりません。クロフト夫妻に殺人の罪を着せた方がポワロさんや警察を納得させやすくて合理的だったと思います。原作ではニックとフレディの関係がもっと詳細に描かれているらしいので、フレディを陥れたい動機も説明されているんでしょうか。まあ、誰に罪を着せようとしても、ポワロさんにはニックがマギーを殺したこと自体が見抜かれてたんで、結果は変わらないんですけどね。隠し戸棚から銃を出したところをジャップ警部に見られたことを考えると、ヘイスティングスがいってたようにマギーを殺してすぐに銃を海に捨てていれば、あるいは尻尾を捕まえられずに逃げ切れたのかもしれません。
<最期>
と、ずいぶん長々書き連ねてきましたが、じっくり思い返すとニックの臨機応変な反応や直感的かつ冷静な判断に改めて驚かされます。そして彼女の真骨頂が披露されたのは最期の場面でした。ポワロさんに犯行を指摘されて逃げ場がないと理解した彼女は、すぐに腕時計を手にして警察署に出向くといいました。おそらくそのときまでは罪を暴かれることを想定していなかったでしょう。でもダメだと悟った瞬間に、コカインを過剰摂取して自殺することを思いつき、絞首台に掛けられるくらいならと、その場で即決しました。この判断の早さ、諦めのよさたるや。真似したいとか憧れるとかそういう気持ちはないけれど、かっこいい犯人だ!と拍手したくなります。鮮やかに散っていく犯罪者は美しくさえ感じます。
町についてすぐ入った喫茶店では、ポワロさんが欲しかった“いわゆる女性相手の”医師の情報を過不足なく端的に伝えてたし、「夢」の時計の件に続いてニックネームを羅列してポワロさんが閃くきっかけを作ったし、「アイスクリームは灰色の脳細胞を死滅させる」なんていってポワロさんをおちょくるセンスもあるし、ミス・レモンは万能すぎやしませんか。機転が利いて演技力があって情報の収集と処理に長けている。もう独立して探偵になっちゃえばいいのに。ポワロさんと肩を並べるような名探偵になれると思うけどな。
ジャップ警部が露店で買い食いしてたピンクの長いヤツは“ロック”と呼ばれるキャンディーだそうで。ググってみると“ブライトン・ロック”がたくさん出てきます。ブライトンで売られてるキャンディとクィーン。…なるほどね。クィーンの名曲"Brighton Rock"はブライトンに住む少女との恋を歌った曲で"Rock of Ages (千歳の岩)"なんてフレーズも出てくるけど、ご当地の名物キャンディの名前も掛かってたんですね。ブライトンといえば青春不良映画「さらば青春の光」のモッズとロッカーズの大乱闘を思い出します。海辺の明るい町でセント・ルーとも雰囲気が似ている気がしました。ジャップ警部のおやつをきっかけに、ポワロとクィーンと大乱闘の3つが頭のなかでぐるぐる回りました。にしてもジャップ警部はあんなに長くてぶっ太い千歳飴みたいなキャンディを全部食べきれたんでしょうか。きっと手がベトベトになったでしょうね。
ミス・レモンにファーストネームを聞かれて、ちっちゃい声で恥ずかしそうに「ジェームズ…」と答えてたのがかわいかったです。
とはいえコメディパートのポワロさんはいつも通りに輝いてました。冒頭の機内もそうだし、「実在の探偵の中で最もユニークで最高の探偵」とニックに説明できないヘイスティングスを叱るポワロさんや、ゆで卵の大きさが揃ってないだけで「食べられません!」と憤るポワロさん、アイスクリームがつかないように片手で髭を抑えるポワロさんは最高でした。ポワロさんの表情や声色やちょっとした動きでいつもお腹を抱えて笑っちゃうんだけど、あの可笑しさはなんなんでしょう。ほかの作品では見られない独特の笑いが大好きです。しかもシリーズが進むにつれて“ポワロさん”というキャラクターが生き生きと躍動するようになっている感じがします。病院のベンチで待ち疲れて寝ちゃったミス・レモンを起こす場面も好きだなあ。どうしようとためらって、すこしウロウロしてから優しく肩をツンってする感じ。
なんでポワロさんはニックを狙った銃が“モーゼル銃”だったとわかったんでしょうか。どんな銃が使われたかを知る手がかりはなかった気がするんです。ポワロさんはテラスで銃弾を見つけましたが、それだけじゃ銃弾のことしかわからないはず。IMFDB によるとあの銃は"Mauser 1910 Pocket Pistol"という25口径のモデルのようなので、たしかにポワロさんの指摘は当たってます。でも同じ25口径の小型ピストルはコルトやベレッタやワルサーも作っていたらしく、たくさんある中から“モーゼル銃”だと見抜けた理由がわからないんです。1930年代の英国では小型ピストルのことを、コルトもベレッタもワルサーもみんな“モーゼル銃”って呼んでた、みたいな背景があったのかなあ。温水洗浄便座のことをTOTOでもINAXでも全部“ウォシュレット”って呼んでるみたいな感じ?よくわかりません。この辺のことは銃の歴史に詳しい方の解説を伺ってみたいです。
ファッションだけじゃなくて愛車までこなれてました。美しいスタイリングが人目を引く高性能ライトウェイトスポーツ、白の ライレー・ナイン は活発なニックにぴったりで、お召し物との相性も完璧。「名探偵ポワロ」は相変わらず車選びのセンスが驚異的です。
サザエさんことフレディはゴージャスで華麗で、ニックとはまた違う魅力を放ってました。ストーリー的にはいまいち彼女の存在感がなかったのが残念です。ニックの訃報を受けたあと部屋にこもって泣いていたのが印象的で(あのときのガウンも妖艶で奇麗でした)、派手でアグレッシブな外見とは裏腹に繊細な感性を持った人なんじゃないかとお見受けします。もう少し彼女の人柄がわかる描写があったらうれしかったな。
ミス・レモンもお召し替えがたくさんあって豪華でしたね。普段からポワロさんに負けないくらいおしゃれですが、今回はいつにも増しておしゃれでした。せっかくリゾートにきたから張り切ったんでしょうね。特にレアなイブニングドレス姿を見れたのがよかった。シックで落ち着いていて、でも華やかさもあってすごくお似合いでした。アクセサリーのチョイスが絶妙なんだよなあ。セント・ルーに着いたときの荷物はそんなに大きくなかったみたいだけど、なにをさせても有能なミス・レモンのことですから、きっとシワを付けずにたくさんの服をパッキングする才能もあるんでしょうね。
ポワロさんはセント・ルーに着いた当初はパナマハットを被ってましたね。中折れタイプの帽子はこれがはじめてです。几帳面なポワロさんらしくキッチリ目深に被っていたのが印象的でした。白の革手袋もはじめてじゃないかと思います。普段はほとんどグレーですからね。パナマを被るくらいの暖かい場所で手袋すると暑いんじゃない?って心配になっちゃいます。“おしゃれは我慢”なんですね。襟のお花は赤いバラでした。ポワロさんは休暇のときに赤いバラを選ぶ傾向があるようです。序盤は白の三つ揃えにパナマでリゾート気分だったのに、マギーが殺されたところで休暇は終了。グレーの三つ揃え、ホンブルグハットに白鳥の杖と、すっかりいつもの仕事モードに戻ってしまいました。。仕事モードに戻れずゴルフにいこうとしたヘイスティングスは、しっかりポワロさんに怒られてしまいました。
Hercule Poirot: DAVID SUCHET
Captain Hastings: HUGH FRASER
Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON
Miss Lemon: PAULINE MORAN
年代物の飛行機を追う優雅な空撮映像からの、いまにも脳の血管が切れそうな切迫したポワロさんの顔アップ。肘掛けをギュッと握りしめ目を固くつぶって恐怖に耐えています。そんなに飛行機が嫌いなら乗らなきゃいいのに。「ポワロさんは想像力が欠如してるんじゃないですかねえ」とヘイスティングスにからかわれて「その通りです!幸い君が2人分持ち合わせているようですから、それで十分ですよ!」と泣き叫ぶこのおじさんが、あんな難事件を解決するような人には見えませんね。このときの“2人分”はエピローグのアイスクリーム2人分と対になっててなかなかニクい演出でした。
このページは名探偵ポワロ「エンドハウスの怪事件」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。
このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。
あらすじや解説はこちらでどうぞ。
●名探偵ポワロ徹底解説
●「名探偵ポワロ」データベース
●旅行鞄にクリスティ
ニックの壮大な計画
ポワロファンの人たちに“好きな犯人は誰?”ってアンケートを取ったら、ニックは間違いなく上位にランキングされるでしょう。強烈なインパクトを残す最高の犯人です。謎が解かれたとき、想像を超えた彼女の才能が一気に明らかになって、めちゃくちゃシビれました。彼女は頭脳明晰で自分に自信を持っていて度胸がある。思い切りと諦めがいい、つまり決断力がある。予想外のできごとがあっても俊敏に反応できて、むしろそれを活用するくらいの柔軟性と冷静さがある。そして自分に演技力や人を惹きつける力があることをよく知っていて、それを武器に周囲の人を思い通りに利用できる。こんな魅力的な犯人はなかなかいません。ポワロさんでさえ見事に翻弄させられました。マギーを殺してマイケルの遺産を相続するというニックの計画は、かなり時間をかけて入念に準備され、さらに実行段階では常に状況を分析して把握し、かなり即興的に行動を変えながら成し遂げられました。ただ1人でそれをやってのけたニックは天才的犯罪者です。このエピソードをただ観ただけではニックの類稀な才能がわかりにくいので、彼女の目線で経緯を書き出してみます。以下、物語上の事実よりも僕の妄想がかなりの部分を占めると思います。ご了承ください。
<動機>
経済的に困窮していてお金持ちの男性と結婚したいニックはシートン卿の甥マイケルに目をつけましたが、彼は従姉妹のマギーと婚約しました。2人が婚約を隠しているとわかり、“世間に婚約が知られる前に2人とも死ねば、同名の自分がマイケルの婚約者だったことにして遺産を相続できる”と思いつきました。
この発想は “遺産の多くは婚約者マギーに相続されるはず”という推測が前提になっていて、その見通しは的確でした。ニックは勘が冴えるとかなんだか予感がするとか、そういう不確実な要素を理由には行動しません。予見が当たったのは“マイケルの経済状況や社会的立場を考えれば彼は遺言書を作成しているはず”という冷静で論理的な分析ができていたからです。以降もニックはロジカルに考察して、そのときの状況や先々起きることを見事に読んでいきます。
<計画>
ニックはマイケルが世界一周飛行を計画中と知って、彼がその飛行で命を落とすと睨み、マイケルの飛行失敗のタイミングでマギーを殺すことを企てました。当初、ニックはすべての罪をクロフト夫妻に着せるつもりだったんじゃないかと思います。一連のできごとが“クロフト夫妻が財産を狙ってニックを殺そうとしたが、誤ってマギーを殺してしまった”と見えるように偽装する計画でした。
<準備>
まずは夫妻にニックの遺言書を改ざんさせることからはじめました。あとでそれが発覚すれば、夫妻が遺産相続を目的に殺害を計画したように見えるからです。田舎者で無学な老人たちの欲を煽って誘導することは簡単でした。偶然盲腸の手術を受けることになりましたが、ニックはこれを絶好の機会とばかりに利用しました。世間知らずで軽卒な若者を演じるニックは、手術直前に夫妻の前で資産の心配をするそぶりを見せて、彼らがニックに遺言書作成を助言したくなるように振る舞いました。ニックはいわれるがまま遺言を書いて夫妻に預け、「弁護士のチャールズに郵送してあげる」という夫妻の言葉に甘えたフリをしました。そうすることで、彼らが欲に駆られて遺言書を改ざんするように仕向けたのです。夫妻は「もしも手術が失敗してニックが死んだらわしら大金持ちだぁ」なんて笑いながら、宝くじを買うようなお遊び気分で遺言書を改ざんしました。これでニックの計画の下地ができ上がりました。
それからしばらくはひたすら時期を待ちました。その間にやったことといえば、マギーが着そうな黒のドレスを用意したこと、常用しているコカインを少しずつ貯めておいて特製コカインチョコレートを作ったこと、マイケルの写真を手に入れて写真立てに入れたことくらい。
<実行>
手術から半年後、マイケル行方不明の報を受けたニックはにわかに行動をはじめました。たまたま同時期にマイケルの叔父シートン卿が死んで遺産額が跳ね上がり、計画に対するモチベーションも俄然上がりました。マギー殺害計画の肝になるのは、洞察力のある人物をこの事件に介入させることです。その人物が“ニックは命を狙われている”と疑うように誘導することで、遺産相続を達成できます。警察か地元の私立探偵にその役をさせるつもりでしたが、世界的に有名な探偵がセント・ルーに来ることを新聞で知り、急遽彼を計画の中心に据えることにしました(ニックはポワロさんが町に来るって知ってたはずだよなぁ、って思いながら見てたんだけど、それを説明をする描写がなくてモヤモヤしてました。で、見終わったあとに 「名探偵ポワロ」データベース を読んでスッキリしました。ちゃんと"FAMOUS DETECTIVE VISITS ST. LOOE"って記事になってたんですね)。
ポワロさんが町に来る前に車のブレーキに細工をし、庭のはずれの崖に大きな岩を落として、「3日間で3度も死にかけた」と友人たちに触れて回りました。そして父の形見の銃で白いハットを撃って穴を開け、銃弾を回収しました。
ポワロさんと接触するためにマジェスティック・ホテルにいくと、たまたまポワロさんが転んでうずくまっていました。それを見た瞬間にニックは「いまがチャンス!」とポワロさんのもとに駆けよって手を貸しました。ファーストコンタクトでいい印象を与えられれば、計画を進める上で自分に疑いの目が向きにくくなるので、このシチュエーションはとても幸運でした。ニックの狙った通りポワロさんは「チャーミングなマドモアゼル」と好感を抱きました。ポワロさんと親しく会話をし、友人にしたように「3日間で3度も死にかけた」話をしました。そして水上飛行機の轟音が響いたところで「顔の前にミツバチが飛んできた」といってハットを脱ぎました。“銃声が聞こえなかったのは飛行機の音がうるさかったから”とポワロさんを誤解させるためにタイミングを見計らいました。実際には狙撃されておらず銃声が聞こえるはずがない状況で、見事にポワロさんを騙したんです。おそらく飛行機の音に合わせて演じるのはその場で思いついた即興だろうと思いますが、現実に即していてとても効果的でした。そして帰る前に発射済みの銃弾を近くに落とし、ポワロさんに介入させるための準備が整いました。
案の定、ハットの穴と銃弾に気づいたポワロさんはすぐに家を訪ねてきて「あなたは命を狙われている」といいました。 「電報でマギーを呼びよせるように」とも。自分から進んでマギーを呼ぼうとするのではなく、ポワロさんの口から提案させることで、ニックが疑われるリスクは格段に下がります。すべてが計画通りに運んでいるので思わず笑いがこぼれそうです。
彼氏が行方不明になり不安でいっぱいなマギーの心情を考慮して、読んだらセント・ルーにいきたくなるような文章を考えて電報を送りました。「マイケルからの手紙を持参するように」という旨の文言も添えて。どんな言い回しだったかはわかりませんが、不信感を抱かせない上手な表現だったはずです。
翌日マギーを駅に迎えにいくついでに、街角の煙草屋だか新聞スタンドだかの、貧乏だけど無口な親父にコカインチョコの小包を預け、数日後に精神病院に郵送するように依頼して小遣いをやりました。マギーが家にやってくると隙を見て荷物の中からマイケルからの手紙を抜き出して、文面に「マギー」と書かれているものとそうでないものを選り分けます。書かれていないものだけを写真と一緒にタンスにしまい、書かれていたものは処分しました。そしてマギーのコートを隠しました。
マギー殺害はこの晩に決行するつもりで計画を立てていましたが、マイケルの死亡を確認しないと殺す意味がありません。幸い夕方のラジオでそのニュースが流れたので予定通り花火大会中に殺害しました。この日を決行日に選んだのは花火の音で銃声が人に気づかれにくいからです。コートを見つけられないマギーは仕向けた通りにニックのストールを身に着けたので、まったくスムーズに殺すことができました。
ポワロさんや警察はマギーがニックと間違えられて撃たれたと推理し、かかりつけの医者は安静と安全確保のために入院するように勧めてきました。すべて思い描いた通りです。勧めに従った形で入院することにしました。
入院中にポワロさんが遺言書について聞いてきたら、わざと曖昧に答えてポワロさんに家捜しをさせ、前もってタンスにしまったマイケルの手紙を見つけさせる算段でした。実際その通りにことが運び、ミスリードした通りにポワロさんは“ニックとマイケルは婚約していたんだ”と誤解してくれました。ここまでくればあとはコカインチョコを食べて死んだフリをするだけです。そうすれば間違いなく、クロフト夫妻は半年前の遺言書を思い出して色めき立ち、それを弁護士のチャールズ宛に郵送するはずです。チョコレートに入れたコカインの量は致死量を超えないようようにしっかり調整してあるので、安心して食べました。
中毒症状が収まって体が落ち着くと、ポワロさんから“ニックは死んだことにして捜査を続けてはどうか”という提案を受けました。それはニック自身が事前に検討していて、むしろニックからポワロさんに提案するつもりでいたことでした。驚いたことにポワロさんはニックが期待した以上に都合よく動いてくれるのです。なので当然受け入れました。
そして全員集合の謎解きと霊媒のクライマックス。もともと演技をするのは嫌いじゃないし、これが終わればマイケルの遺産を相続できると思うとテンションが上がるし、オバケ役をノリノリでやりました。だからまさか自分の周到な犯行がポワロさんに見抜かれるなんて思ってもいなくて…。
ポワロさんの謎解きが始まる前に、ニックが親友のフレディのコートに銃を忍ばせたのはすごく違和感がありました。もちろん“ニックを殺そうとしたのは経済的に困窮したフレディだった”ということにしたかったんでしょうが、“遺言書を改ざんした犯人とマギーを殺した犯人が別”というのはちょっとチグハグな印象を受けます。ニックがなぜフレディに罪を着せようと考えたのか、どのタイミングで計画を変更したのかはわかりません。クロフト夫妻に殺人の罪を着せた方がポワロさんや警察を納得させやすくて合理的だったと思います。原作ではニックとフレディの関係がもっと詳細に描かれているらしいので、フレディを陥れたい動機も説明されているんでしょうか。まあ、誰に罪を着せようとしても、ポワロさんにはニックがマギーを殺したこと自体が見抜かれてたんで、結果は変わらないんですけどね。隠し戸棚から銃を出したところをジャップ警部に見られたことを考えると、ヘイスティングスがいってたようにマギーを殺してすぐに銃を海に捨てていれば、あるいは尻尾を捕まえられずに逃げ切れたのかもしれません。
<最期>
と、ずいぶん長々書き連ねてきましたが、じっくり思い返すとニックの臨機応変な反応や直感的かつ冷静な判断に改めて驚かされます。そして彼女の真骨頂が披露されたのは最期の場面でした。ポワロさんに犯行を指摘されて逃げ場がないと理解した彼女は、すぐに腕時計を手にして警察署に出向くといいました。おそらくそのときまでは罪を暴かれることを想定していなかったでしょう。でもダメだと悟った瞬間に、コカインを過剰摂取して自殺することを思いつき、絞首台に掛けられるくらいならと、その場で即決しました。この判断の早さ、諦めのよさたるや。真似したいとか憧れるとかそういう気持ちはないけれど、かっこいい犯人だ!と拍手したくなります。鮮やかに散っていく犯罪者は美しくさえ感じます。
秘書にしておくにはもったいない
「通常の場合ですと故人の遺言は葬儀のあとで読まれるものですが…」というお約束の台詞ではじまる遺言書開封の儀(このシリーズでは逆に葬儀のあとに開封されることの方が珍しい気がします)。そこにミス・レモンも同席してるのが気になったけど、まさか霊能力者の役をやらさられるとはね。しかも事前打ち合わせゼロで突然。でも彼女はそんな無茶ぶりにも余裕で応じます。なんであんな面白霊媒が即興でできるんだ。町についてすぐ入った喫茶店では、ポワロさんが欲しかった“いわゆる女性相手の”医師の情報を過不足なく端的に伝えてたし、「夢」の時計の件に続いてニックネームを羅列してポワロさんが閃くきっかけを作ったし、「アイスクリームは灰色の脳細胞を死滅させる」なんていってポワロさんをおちょくるセンスもあるし、ミス・レモンは万能すぎやしませんか。機転が利いて演技力があって情報の収集と処理に長けている。もう独立して探偵になっちゃえばいいのに。ポワロさんと肩を並べるような名探偵になれると思うけどな。
オレ、豚殺すトコ見るの好きなんだッ!
っていう少年の率直なコメントに不快感を隠せないジャップ警部。 「ここの連中はみんなああですか!」なんてポワロさんに怒ってました。そのポワロさんも弁護士チャールズに存在を知られてなくて「どういう町ですかここは!」って怒ってましたね。セント・ルーはロンドンの都会っ子には不快な町なようです。ジャップ警部が露店で買い食いしてたピンクの長いヤツは“ロック”と呼ばれるキャンディーだそうで。ググってみると“ブライトン・ロック”がたくさん出てきます。ブライトンで売られてるキャンディとクィーン。…なるほどね。クィーンの名曲"Brighton Rock"はブライトンに住む少女との恋を歌った曲で"Rock of Ages (千歳の岩)"なんてフレーズも出てくるけど、ご当地の名物キャンディの名前も掛かってたんですね。ブライトンといえば青春不良映画「さらば青春の光」のモッズとロッカーズの大乱闘を思い出します。海辺の明るい町でセント・ルーとも雰囲気が似ている気がしました。ジャップ警部のおやつをきっかけに、ポワロとクィーンと大乱闘の3つが頭のなかでぐるぐる回りました。にしてもジャップ警部はあんなに長くてぶっ太い千歳飴みたいなキャンディを全部食べきれたんでしょうか。きっと手がベトベトになったでしょうね。
ミス・レモンにファーストネームを聞かれて、ちっちゃい声で恥ずかしそうに「ジェームズ…」と答えてたのがかわいかったです。
名脇役ポワロ
今回は普段よりもポワロさんの存在感が薄かった気がします。口数が少なかったとか推理が鮮やかじゃなかったなんてことは全然ないんだけど、いかんせんニックやミス・レモンといった女性陣の活躍が目立っていて、そちらの印象の方が強いんですよね。中盤までまんまとニックに誘導されてしまっていたことも、薄味なイメージに拍車をかけているかもしれません。とはいえコメディパートのポワロさんはいつも通りに輝いてました。冒頭の機内もそうだし、「実在の探偵の中で最もユニークで最高の探偵」とニックに説明できないヘイスティングスを叱るポワロさんや、ゆで卵の大きさが揃ってないだけで「食べられません!」と憤るポワロさん、アイスクリームがつかないように片手で髭を抑えるポワロさんは最高でした。ポワロさんの表情や声色やちょっとした動きでいつもお腹を抱えて笑っちゃうんだけど、あの可笑しさはなんなんでしょう。ほかの作品では見られない独特の笑いが大好きです。しかもシリーズが進むにつれて“ポワロさん”というキャラクターが生き生きと躍動するようになっている感じがします。病院のベンチで待ち疲れて寝ちゃったミス・レモンを起こす場面も好きだなあ。どうしようとためらって、すこしウロウロしてから優しく肩をツンってする感じ。
なんでポワロさんはニックを狙った銃が“モーゼル銃”だったとわかったんでしょうか。どんな銃が使われたかを知る手がかりはなかった気がするんです。ポワロさんはテラスで銃弾を見つけましたが、それだけじゃ銃弾のことしかわからないはず。IMFDB によるとあの銃は"Mauser 1910 Pocket Pistol"という25口径のモデルのようなので、たしかにポワロさんの指摘は当たってます。でも同じ25口径の小型ピストルはコルトやベレッタやワルサーも作っていたらしく、たくさんある中から“モーゼル銃”だと見抜けた理由がわからないんです。1930年代の英国では小型ピストルのことを、コルトもベレッタもワルサーもみんな“モーゼル銃”って呼んでた、みたいな背景があったのかなあ。温水洗浄便座のことをTOTOでもINAXでも全部“ウォシュレット”って呼んでるみたいな感じ?よくわかりません。この辺のことは銃の歴史に詳しい方の解説を伺ってみたいです。
本日のおしゃれ
おしゃれの面でも女性陣がポワロさんをリードしてました。その筆頭はもちろんニック。白いワンピースには襟や袖にアール・デコ調のストライプがあしらわれて都会的だし、水色のドレスもかわいらしくもどこかクールな印象だったし、洗練されたお召し物がとってもお似合いでした。なかでも白をベースに赤を際立てたセットアップは、彼女の華やかさや聡明さ、行動力が透けて見えて素敵だったなあ。ジャケットを着るのを手伝って襟をなおしてあげるポワロさんの手つきは気になったけど。優しさなのかただエロいだけなのかさっぱりわかりませんでした。ファッションだけじゃなくて愛車までこなれてました。美しいスタイリングが人目を引く高性能ライトウェイトスポーツ、白の ライレー・ナイン は活発なニックにぴったりで、お召し物との相性も完璧。「名探偵ポワロ」は相変わらず車選びのセンスが驚異的です。
サザエさんことフレディはゴージャスで華麗で、ニックとはまた違う魅力を放ってました。ストーリー的にはいまいち彼女の存在感がなかったのが残念です。ニックの訃報を受けたあと部屋にこもって泣いていたのが印象的で(あのときのガウンも妖艶で奇麗でした)、派手でアグレッシブな外見とは裏腹に繊細な感性を持った人なんじゃないかとお見受けします。もう少し彼女の人柄がわかる描写があったらうれしかったな。
ミス・レモンもお召し替えがたくさんあって豪華でしたね。普段からポワロさんに負けないくらいおしゃれですが、今回はいつにも増しておしゃれでした。せっかくリゾートにきたから張り切ったんでしょうね。特にレアなイブニングドレス姿を見れたのがよかった。シックで落ち着いていて、でも華やかさもあってすごくお似合いでした。アクセサリーのチョイスが絶妙なんだよなあ。セント・ルーに着いたときの荷物はそんなに大きくなかったみたいだけど、なにをさせても有能なミス・レモンのことですから、きっとシワを付けずにたくさんの服をパッキングする才能もあるんでしょうね。
ポワロさんはセント・ルーに着いた当初はパナマハットを被ってましたね。中折れタイプの帽子はこれがはじめてです。几帳面なポワロさんらしくキッチリ目深に被っていたのが印象的でした。白の革手袋もはじめてじゃないかと思います。普段はほとんどグレーですからね。パナマを被るくらいの暖かい場所で手袋すると暑いんじゃない?って心配になっちゃいます。“おしゃれは我慢”なんですね。襟のお花は赤いバラでした。ポワロさんは休暇のときに赤いバラを選ぶ傾向があるようです。序盤は白の三つ揃えにパナマでリゾート気分だったのに、マギーが殺されたところで休暇は終了。グレーの三つ揃え、ホンブルグハットに白鳥の杖と、すっかりいつもの仕事モードに戻ってしまいました。。仕事モードに戻れずゴルフにいこうとしたヘイスティングスは、しっかりポワロさんに怒られてしまいました。
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