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「ポワロと灰色の脳細胞」について Series 1 #01 「コックを捜せ」—ブチギレのポワロさんを愛でよう #02 「ミューズ街の殺人」—中華風なジャズに心躍る #03 「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」—バカが勝手に暴れて、勝手に自滅した #04 「24羽の黒つぐみ」 —ソースのおかわりは!? あ、いいです。あとで…。 #05 「4階の部屋」—主演:フローリン・コート(ホワイトヘブン・マンション役) #06 「砂に書かれた三角形」—おしゃれ合戦 #07 「海上の悲劇」—殺人は許せませんからね #08 「なぞの盗難事件」—ヤツがわしのデザートを盗ったぞ! #09 「クラブのキング」—ヒッチコックを殺れ! #10 「夢」—Type with fury!! Series 2 #11 「エンドハウスの怪事件」—美しく散る殺人犯 #12 「ベールをかけた女」—ドロンジョ様とドロボーのドタバタコント #13 「消えた廃坑」—本部から全車へ、今だ!捕まえろ! #14 「コーンワルの毒殺事件」—どいつもこいつも ダベンハイム失そう事件 二重の罪 安いマンションの事件 誘拐された総理大臣 西洋の星の盗難事件 100th Anniversary Special スタイルズ荘の怪事件 Series 3 あなたの庭はどんな庭? 100万ドル債券盗難事件 プリマス行き急行列車 スズメバチの巣 マースドン荘の惨劇 二重の手がかり スペイン櫃の秘密 盗まれたロイヤル・ルビー 戦勝舞踏会事件 猟人荘の怪事件 Series 4 ABC殺人事件 雲をつかむ死 愛国殺人 Series 5 エジプト墳墓のなぞ 負け犬 黄色いアイリス なぞの遺言書 イタリア貴族殺害事件 チョコレートの箱 死人の鏡 グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件 Series 6  ポワロのクリスマス ヒッコリー・ロ...

#14 「コーンワルの毒殺事件」—どいつもこいつも 名探偵ポワロ

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The Cornish Mystery (28 January 1990) Hercule Poirot: DAVID SUCHET Captain Hastings: HUGH FRASER Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON Miss Lemon: PAULINE MORAN 雨に濡れる窓から物憂げに外を眺めるポワロさん。表情が暗かったのは単純にヘイスティングスのヘンテコなヨガに呆れたからでしたが、雨はしとしとと降り続き、寒々しく陰鬱な空気は最後まで引きずられます。田舎特有の閉塞感と人々の排他的な気配がそれに拍車をかけました。 このページは名探偵ポワロ「コーンワルの毒殺事件」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。 「砂に書かれた三角形」 と 「エンドハウスの怪事件」 にもちょっと触れています。 このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。  あらすじや解説はこちらでどうぞ。 ●名探偵ポワロ徹底解説 ●「名探偵ポワロ」データベース ●旅行鞄にクリスティ どいつもこいつもいけ好かない このエピソードが陰々滅々としている一番の理由は、コーンワルの奴らがことごとく不愉快だからでしょうね。なにがどう不愉快だったか順にご紹介していきましょう。 まずはペンゲリー夫人。姪の婚約者ラドナーを愛してしまったことも、それでいて夫の不倫は許さないことも、姪のフリーダに嫉妬して家を追い出したことも、責める気はありません。人を好きになったり憎んだりするのをコントロールできる人なんていませんから。でもフリーダが出ていった理由をポワロさんに聞かれて「わかりませんわ」と答えたり、フリーダとラドナーの関係についても「なにも!なにもありませんわ!」ってすぐにバレる嘘を平気でつく感じがすごく気持ち悪いです。本人は嘘をついてる自覚がないんだろうけど。この人、気に入らない現実は全部なかったことにして自分の妄想の世界に生きてる、ナチュラルにヤバい奴でした。「殺されそうで怖い」って一心でポワロさんに相談したっぽいけど、そうしたら自分に不都合なことも知られてしまうっていうことを想像で...

#13 「消えた廃坑」—本部から全車へ、今だ!捕まえろ! 名探偵ポワロ

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The Lost Mine (21 January 1990) Hercule Poirot: DAVID SUCHET Captain Hastings: HUGH FRASER Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON Miss Lemon: PAULINE MORAN ブーツの駒が進むと 男 の足元が映り、帽子の駒が進むと シルクハットを被った男の後姿に切り替わる。テーブル上のモノポリーと怪しげな正装の男のカットバックがたまらくかっこいいオープニング。 ポワロさんとヘイスティングスが夢中になってたモノポリーは1935年の大ヒット作だそうです。以前シャツの糊が強すぎた件で襟を折ればいいといわれたときには「このポワロが流行りに左右されるとでも?」なんて豪語してましたけど、ゲームの流行にはしっかり乗るんですね。 ヘイスティングスに大金を取られてカンカンに怒るくらい熱くなってました。「私もあなたのようにサイコロをふぅふぅ吹けばいいんですかね!」なんて声を裏返しちゃって。お札をキッチリ並べて収支をメモするのがいかにもポワロさんらしいです。あれがまさか不幸の原因になるなんて…。 このページは名探偵ポワロ「消えた廃坑」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。 このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。  あらすじや解説はこちらでどうぞ。 ●名探偵ポワロ徹底解説 ●「名探偵ポワロ」データベース ●旅行鞄にクリスティ 指令本部 物語に登場するいろんな要素をオーバーラップさせて、作品に一体感を持たせる演出が印象的でした。事件の引き金になった銀鉱山からはじまり、モノポリー、株式投資、カジノのギャンブルと、まさに山師的な勝負事の熱気が作品全体を覆っています。“緻密さは軍隊並み”と称されるスコットランド・ヤード指令本部もそう。無線連絡を受けながら実際の警察車両の動きに合わせてミニカーを操作する様子は、ルーレットのディーラーがチップを捌く姿とそっくりです。 この指令本部、めちゃめちゃ好きです。薄暗がりでみんな同じ服装で、テクノロジーとレトロ感が混ざり合って、 ...

#12 「ベールをかけた女」—ドロンジョ様とドロボーのドタバタコント 名探偵ポワロ

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The Veiled Lady (14 January 1990) Hercule Poirot: DAVID SUCHET Captain Hastings: HUGH FRASER Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON Miss Lemon: PAULINE MORAN 「騙されるんじゃないぞ、何ヶ月も追っていた凶悪犯だ。本名は誰も知らんのだ。通称狂犬と呼ばれている」 留置所のポワロさんを助けに来たジャップ警部がここぞとばかりにおちょくります。そしてそれを睨みつけるポワロさんの顔。今回はコメディ感の濃い…というか全編がコメディ一色で長編コントみたいな構成でした。 上流階級がモチーフになることが多いこのシリーズで、身分が低めの人たちがたくさん登場したのも今回の特徴です。犯人は思いっきり下層だし、住み込み家政婦のゴッドバー夫人は中流。留置所では一目でヤク中とわかるヘロヘロ娼婦まで映って、いつもとは違うテイストでした。1930年代のロンドンがいろんな視点で描かれるのを見るとウキウキします。 このページは名探偵ポワロ「ベールをかけた女」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。 このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。  あらすじや解説はこちらでどうぞ。 ●名探偵ポワロ徹底解説 ●「名探偵ポワロ」データベース ●旅行鞄にクリスティ コスプレポワロ なんといってもドロボー姿のポワロさんとヘイスティングスが最高でした。暗闇で右往左往する時間が異様に長い。灰色の脳細胞に問いかける瞑想タイムまではじまっちゃって。力技で笑わせようとしてきます。そして極めつけはヘイスティングスのガラス窓ぶち破り&トンズラ。あんなにモッサリした脱出アクションは見たことありません。そこからさらに慌てるポワロさんと啖呵を切るゴッドバー夫人は、セリフ回しも表情も明らかにお笑いのそれです。もはや制作陣にはこれが探偵ドラマだってことを覚えてる人がいないみたい。僕ら観客もミステリーのことは一旦置いて笑いに身を委ねるしかありません。 事前準備の錠前屋スタイルもヤバかった...

#11 「エンドハウスの怪事件」—美しく散る殺人犯 名探偵ポワロ

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Peril at End House (7 January 1990) Hercule Poirot: DAVID SUCHET Captain Hastings: HUGH FRASER Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON Miss Lemon: PAULINE MORAN 年代物の飛行機を追う優雅な空撮映像からの、いまにも脳の血管が切れそうな切迫したポワロさんの顔アップ。肘掛けをギュッと握りしめ目を固くつぶって恐怖に耐えています。そんなに飛行機が嫌いなら乗らなきゃいいのに。 「ポワロさんは想像力が欠如してるんじゃないですかねえ」とヘイスティングスにからかわれて「その通りです!幸い君が2人分持ち合わせているようですから、それで十分ですよ!」と泣き叫ぶこのおじさんが、あんな難事件を解決するような人には見えませんね。このときの“2人分”はエピローグのアイスクリーム2人分と対になっててなかなかニクい演出でした。 このページは名探偵ポワロ「エンドハウスの怪事件」を観た方に向けて書かれていて、事件の核心、犯人、動機、結末、オチ、ギャグなどに触れます。ですのでドラマ本編をご覧になったあとにお読みください。 このブログがはじめての方は 「ポワロと灰色の脳細胞」について からぜひ。  あらすじや解説はこちらでどうぞ。 ●名探偵ポワロ徹底解説 ●「名探偵ポワロ」データベース ●旅行鞄にクリスティ ニックの壮大な計画 ポワロ ファンの人たちに“好きな犯人は誰?”ってアンケートを取ったら、ニックは間違いなく上位にランキングされるでしょう。強烈なインパクトを残す最高の犯人です。謎が解かれたとき、想像を超えた彼女の才能が一気に明らかになって、めちゃくちゃシビれました。彼女は頭脳明晰で自分に自信を持っていて度胸がある。思い切りと諦めがいい、つまり決断力がある。予想外のできごとがあっても俊敏に反応できて、むしろそれを活用するくらいの柔軟性と冷静さがある。そして自分に演技力や人を惹きつける力があることをよく知っていて、それを武器に周囲の人を思い通りに利用できる。こんな魅力的な犯人はなかなかいません。ポワロさんでさえ見事に翻弄させられました。 マギーを殺してマイケルの遺産を相続するというニックの計...